SUMMER RAIN

夏の雨は時に優しく、時に無情・・・

好きなもの 旅行

初めて訪れる土地は非常に胸がときめきます。 初めて見るもの、食べるもの、その土地の人々との触れ合い。 また、以前、訪れて気に入った場所に何度も行くこともありますが、その1つに京都があります。その歴史と文化は飽きることがなく、ゆったりと時間が流…

好きなもの 青

幼稚園の庭に咲いていた紫陽花、海、空、地球、ピカソの【青の時代】。 惹かれるものは青いものが多く、見ていてとても落ち着きます。 それは、自然界に当然あるものであると同時に、安らぎの色でもあるのでしょう。 青いバラはずっと不可能だと言われていま…

好きなもの 馬

自動車のなかった時代、人の足として大活躍した馬。 草原などを駆ける姿はとても美しく、つい見惚れてしまいます。 乗馬体験した際、乗ってみると思っていたより全然高くて恐怖を感じましたが、 【人馬一体】という言葉があるように、乗りこなせたら楽しいん…

好きなもの 雨

『雨』から想像する言葉、 ロマンティック、傘、陰鬱、悲しみ・・・。 映画やドラマのシチュエーションでも、雨は重要な小道具のひとつですが、 それは何かが起こるのを期待させるから。 地面を叩きつける雨を窓から眺めるのもいいし、夜、横断歩道で、信号…

好きなもの 昭和

最近、TVで「昭和歌謡ポップス」が取り上げられる機会がありますが、昭和生まれとしては、ただただ懐かしく思って見ています。 TVやラジオで流れ、喫茶店等で有線放送に公衆電話からリクエストしていた流行歌は、当時、国民の共通の歌でした。 それが次…

好きなもの 映画

これまでで最も心に残っている映画を1本あげるとしたら、 スティーヴン・スピルバーグの『激突!』。 リチャード・マシスンの短編小説を映像化した、1971年製作のアメリカのTV映画ですが、初めてTVの洋画劇場で見た時のことは忘れられない記憶となってい…

好きなもの 秋のジャズ

聴き慣れないと、なかなか手を出そうと思わない感じのジャズですが、そのなかで唯一、耳障りの良いアルバムがナタリー・コールの『アンフォゲッタブル』。 1991年に発表したこのアルバムは、グラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞しています。 ナタリーはかの…

好きなもの 三国志

「三国志」と言えば、最近だと映画『レッドクリフ』が有名ですが、本場中国より、日本での人気の方が高い話かもしれません。 個人的にも、「歴史上で最も好きな人物は?」と聞かれたら、「諸葛孔明」と答えますし、 「もしタイムスリップできたら誰に会いた…

好きなもの TVドラマ

子供時代に大人と一緒に過ごす時間が長かったこともあって、 国内のものより海外ドラマをよく見ました。 今ではトム・クルーズの代表作『ミッションインポッシブル』の元である『スパイ大作戦』や、『チャーリーズ・エンジェル』。当時、『チャーリーズ・エ…

好きなもの 本

久々の投稿となります。 個人的に好きなもの…本や映画、音楽等について書いてみようと思います。 今回は本について。 若い頃は時代も時代で、とにかく退廃的なものがお洒落で格好いいと思っていた節があります。 なので、サガンやサリンジャー、カミュ、国内…

ひとこと

小説『SUMMER RAIN』は1994年に執筆しました。 多少なりとも楽しめて頂けたら嬉しいです。

第4章 夢のかけら 〈6〉

頂上は目前だった。横殴りの暴風雨が一段と激しさを増し、2人の乗っている車も吹き飛ばしてしまいそうな勢いだった。 「あれは事故だったんだ…」後部座席に釘付けになっているマスターに、彼は声を戦慄かせて言った。「雨のせいだ。決して酔ってたわけじゃな…

第4章 夢のかけら 〈5〉

いよいよ頂上に近づいていた。マスターは彼の方を向いてはいたものの、見通しの悪い前方からも目を離せずにいた。外はもう嵐で、木々は怒り狂ったように踊り続け、激しく車に打ちつける雨や風の音が彼のハスキーな声をかき消していく。 「全然気がつかなかっ…

第4章 夢のかけら 〈4〉

彼は口を閉ざしたまま高速を下りた。マスターは不安そうに彼をみつめていた。雨は休みことなく驚異的に降り続いている。暗闇の中へ車ごと吸い込まれていきそうな沈黙が続いた。そして車は細く曲がりくねった暗がりの山道を、彼の危なげなハンドル捌きで登り…

第4章 夢のかけら 〈3〉

車は高速道路を走っていた。制限速度をはるかに超えたスピードを出し、時々スリップを起こしている。それでも彼は少しもスピードを緩めようとせず、ひたすら前方だけをみつめて沈黙を守っていた。 マスターはようやく彼が酔っていることに気がついた。「おい…

第4章 夢のかけら 〈2〉

外に出ると土砂降りの雨が地面を叩きつけており、傘はほとんど役に立たなかった。マスターが急いで助手席に乗り込むと、車は滑るように動き出した。 マスターのマンションは店からだいたい車で五十分くらいのところにある。彼の家まではそれからさらに一時間…

第4章 夢のかけら 〈1〉

最後の客が出て行くと、マスターはドアに鍵をかけた。それから洗い物を手早く片づけ、カウンターの上で売上金の計算をしていた。その時、“ドンドン”とドアを執拗に叩く音がした。マスターはカウンターの隅にある小さな時計を見遣った。午前一時二十三分だっ…

第3章 裏切りの街角 〈7〉

※ 今度はずぶ濡れの男が店に入ってきた。その姿は女のアパートへ帰ってきた時の彼と同じくらい、ひどく哀れだった。 そして少しすると、ダーツで盛り上がっていた若い女と黒人たちが出ていった。店はまた静寂を取り戻した。 ※ 座り込んだ彼はそれから時間が…

第3章 裏切りの街角 〈6〉

※ 店に若い女と黒人二人が入ってきた。彼には三人の話す英語が耳障りだった。 ※ 亡者の集う競馬場から放心状態で女のアパートへ帰ってくると、アパートの前で彼の妻が待っていた。彼女はその太ったからだにピッタリ合った品の良いグレンチェックのスーツを着…

第3章 裏切りの街角 〈5〉

雲が低く垂れこめた競馬場は人で溢れ、澱んだ空気が広がっていた。遠ざかっていた勝負師の感覚はすぐに蘇ってきた。早速競馬新聞を買い、パドックを食い入るようにみつめては、赤ペンで印をつけたり数字を書き込んだりしていた。 手始めに賭けた九レースは見…

第3章 裏切りの街角 〈4〉

※ 騒がしかった若者たちが店を出ていき、代わりに重苦しい沈黙が店を支配した。 「今、出てった中の一人、今日の競馬で大穴を当てたらしいよ」とマスターは空になった彼のグラスを笑顔で満たしながら言った。 彼はマスターをすばやく一瞥すると、「そう…」と…

第3章 裏切りの街角 〈3〉

それから女は流していたタクシーを拾い、彼を自分のアパートに連れていった。部屋には必要最低限のものしか置いておらず、電話もなく、カーテンさえ取り付けていなかった。あまりにも色気のない部屋だったことは確かである。しかし、すでに口の渇きに耐えか…

第3章 裏切りの街角 〈2〉

三週間ほど前、彼が二か月もの間に一台も売らなかったことで、遂に部長から〈給料泥棒〉とまで言われた。丸く、血色の良い部長の顔が自分を蔑んでいた。彼はカッと頭に血がのぼり、右手をギュッと握りしめたが、最後までその拳が振り上げられることはなかっ…

第3章 裏切りの街角 〈1〉

男が店にやってきたのは午後九時半頃だった。店は能天気な若い男女で溢れていた。マスターが一番奥に席をつくってくれ、ようやく座ると男はスコッチを注文した。 「久しぶりじゃない!」と琥珀色のグラスを差し出しながらマスターが言った。 「え? ああ、そ…

第2章 ヒッピーに憧れて〈7〉

ふと気がつくと、トミーが「ダーツをしよう」と呼んでいた。 「OK!」 それから三人はダーツで盛り上がった。彼女は二人の永遠の愛を祈った。 暫くすると、びしょ濡れになった男が一人で店に入ってきた。顔色は冴えず、心ここにあらずといった感じだった。 三…

第2章 ヒッピーに憧れて〈6〉

パリでの二人の関係は申し分なかった。麻美の機嫌がすこぶる良かったからである。エッフェル塔やコンコルド広場、シャンゼリゼでのショッピング。恵理は大いにパリが気に入った。パリの人々は時間に逆らわず、自由にのびのびと生きている。何より彼女が好き…

第2章 ヒッピーに憧れて〈5〉

恵理は麻美と違って物欲がなく、性別も彼女にとっては無意味なものだった。そして七十年代のヒッピーに漠然とした憧れを抱いていた。彼らのように何物にも囚われない自由な生き方をし、自分のすべてを解き放ちたいと思っていたのである。彼女の理想は男女を…

第2章 ヒッピーに憧れて〈4〉

二年前、恵理はある高級クラブでピアノを弾いていた。その日もいつものように午前三時に店を引け、裏から出ていくと、一台の車が待っていた。 後部座席の女が顔を覗かせた。「ピアノ、すごく良かったわ」女は微笑みながら言った。「よかったら、うちに来ない…

第2章 ヒッピーに憧れて〈3〉

「久しぶりね、恵理。方々探し回ったのよ」 女は相変わらず美しかったが、肌に翳りが感じられた。完璧なメイクの下で、歳月が少しずつ、しかし確実に彼女の肌を蝕んでいるようだ。そこは殺伐としたところで、置いてあるのは小型テーブルとそれを挟んで布張り…

第2章 ヒッピーに憧れて〈2〉

今日の正午過ぎ、人気のない通りを恵理は一人で歩いていた。雨はまだ降っていなかったが、どんよりと曇った空がすべての色彩をぼやけさせ、生温かい風が肌にまとわりついて離れなかった。 突然、猛スピードでやってきた一台の車が恵理のところで急ブレーキを…