第2章 ヒッピーに憧れて〈7〉
ふと気がつくと、トミーが「ダーツをしよう」と呼んでいた。
「OK!」
それから三人はダーツで盛り上がった。彼女は二人の永遠の愛を祈った。
暫くすると、びしょ濡れになった男が一人で店に入ってきた。顔色は冴えず、心ここにあらずといった感じだった。
三人はダーツに飽きて引き上げることにした。精算を済ませると、恵理は二人に外で待っているよう目で合図した。
「まだ降ってるのね」と恵理は男に言った。
男はチラッと恵理を見て、止みそうにないと言った。男が傘を持っていないと言うので、自分のナイロン製の傘を強引に手渡した。それは男に対する同情というより、自分を勇気づけるためのものだった。
外でジョージとトミーが待っていた。雨はやはり降っている。ジョージと相合傘をして三人で歩き始めると、通りの角に人影が二つ伸びているのが視界に入った。その影はどこまでもついてくる。
「まるで自分の影みたい」と思いながら、恵理はそのまま歩き続けた。
〈続〉